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洋菓子にお金を使う街は、人口とは別の地図だった【家計調査】

シュークリームが一番食べられている街は、どこだと思いますか。

人口の多い街ほど食べている。そう考えるのが自然です。ところが総務省の家計調査を開くと、洋菓子にお金を使う街の地図は、人口の順番とは違う形をしていました。

「どの街が洋菓子好きなのか」興味ある分野ではないでしょうか?そこで、公的な統計に当たって調べてみました。

先に断っておくと、家計調査にシュークリームだけの項目はありません。見られるのは、ケーキと「他の洋生菓子」への支出です。それでも、浮かび上がる地図はおもしろい。2023〜2025年の3年平均で、街ごとの顔を見ていきます。

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シュークリームだけの統計は、実は存在しない

家計調査は、総務省統計局が全国約9,000世帯に家計簿をつけてもらい、収入と支出を毎月調べる統計です。菓子類は16品目に分かれていて、洋菓子の側は「カステラ」「ケーキ」「ゼリー」「プリン」「他の洋生菓子」の5つ。シュークリームの名前は、どこにもありません。

ケーキの例示に挙がっているのは、サバラン、ショートケーキ、モンブラン、チーズケーキ。バームクーヘン、パウンドケーキ、アップルパイは「他の洋生菓子」に入ります。この枠は、カステラ・ゼリー・ケーキ・プリンを除いた残り全部です。ケーキの例示にシューがない以上、残りの枠に入ると読むのが自然です。ただし同じ枠に焼き菓子も同居しています。シューだけの数字ではない、という点は頭の片隅に置いてください。

もう一つ、数字の読み方を整理しておきます。

  • 対象は52都市です。47都道府県庁所在市と、川崎・相模原・浜松・堺・北九州の5市。県全体ではなく、市の話です。
  • 二人以上の世帯の、1世帯あたり年間支出金額です。人口の大小は関係なく、世帯の平均を比べています。
  • 見ているのは金額で、量ではありません。ケーキは購入数量や平均価格が調べられていないので、「消費量」ではなく「支出額」と呼ぶのが正確です。
  • 約9,000世帯のサンプル調査なので、僅差の順位は入れ替わりやすい。

ケーキ:人口の順ではない。ただし首都圏は強い

ケーキへの年間支出が最も多いのはさいたま市の9,539円。全国平均の7,630円と比べて、約1.25倍です。

ケーキのショーケース

ケーキへの年間支出 上位10都市(2023〜2025年平均・二人以上の世帯)
順位 都市 年間支出(円)
1 さいたま市 9,539
2 高知市 8,900
3 東京都区部 8,897
4 福島市 8,852
5 横浜市 8,834
6 宇都宮市 8,824
7 鳥取市 8,803
8 川崎市 8,721
9 千葉市 8,678
10 熊本市 8,627

全国平均は7,630円、最下位は宮崎市の6,091円です。1位と最下位の差は約1.6倍でした。

上位10都市のうち5つは首都圏(さいたま、東京都区部、横浜、川崎、千葉)。ここだけ見ると「人口の多い大都市圏が強い」という話に戻りそうですが、そうはなりません。大阪市は22位(7,608円)、名古屋市は16位(7,836円)、札幌市は38位(7,130円)。人口の上位都市が並ぶわけではないのです。一方で、高知、福島、鳥取、宇都宮、熊本のような中規模の街が、東京や横浜と肩を並べています。

近畿の大都市は、ケーキでは目立ちません。京都市は21位、神戸市は47位。ところが次の章で、この近畿が主役になります。宇都宮市が6位に入っていることも、頭に置いておいてください。

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「他の洋生菓子」では、近畿が上位を占める

さくらんぼのタルト

シュークリームが入っていると考えられる「他の洋生菓子」に目を移すと、顔ぶれが一変します。1位は金沢市の13,733円。全国平均の10,920円と比べて、約1.26倍です。

「他の洋生菓子」への年間支出 上位10都市(2023〜2025年平均・二人以上の世帯)
順位 都市 年間支出(円) ケーキでの順位
1 金沢市 13,733 18位
2 京都市 13,702 21位
3 神戸市 13,127 47位
4 大阪市 13,114 22位
5 大津市 13,062 25位
6 堺市 12,979 29位
7 奈良市 12,964 36位
8 岡山市 12,938 11位
9 東京都区部 12,889 3位
10 山形市 12,812 30位

上位10都市のうち6つが近畿です(京都、神戸、大阪、大津、堺、奈良)。ケーキの順位と並べると、ほとんど裏返しになっているのが分かります。神戸市はケーキが47位なのに、洋生菓子は3位。京都市は21位から2位へ、大阪市は22位から4位へ上がります。ケーキは首都圏、洋生菓子は近畿。同じ洋菓子でも、街によって手が伸びる先が違うのです。

注意点が二つあります。まず、近畿なら全部強いわけではありません。和歌山市は40位(9,661円)です。次に、1位から7位までの差は約770円しかなく、このあたりの順位は調査の年が変われば入れ替わるでしょう。11位は富山市(12,614円)、宇都宮市は22位(11,332円)でした。

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金沢、山形、富山、宇都宮:洋菓子好きの街の顔

タルトを食べる女性

順位だけ眺めても、街の個性は見えてきません。気になる4都市を、菓子類の全体と並べてみます。

4都市の順位(2023〜2025年平均)
都市 菓子類全体 ケーキ 他の洋生菓子 目立つ項目
金沢市 3位 18位 1位 他の和生菓子も1位
山形市 2位 30位 10位 チョコレート菓子1位、せんべい2位
富山市 12位 19位 11位 ゼリー5位
宇都宮市 18位 6位 22位 プリン3位

金沢市:和も洋も強い街

他の和生菓子が15,395円(全国10,161円)で1位、他の洋生菓子でも1位。菓子類の合計は、2021〜2023年平均と2022〜2024年平均では全国1位でした。2023〜2025年は3位(116,178円)に下がりましたが、常に最上位にいます。

山形市:洋菓子というより、お菓子全般の街

菓子類の合計は2位の117,036円。チョコレート菓子が1位、せんべいとアイスクリームが2位、ゼリーが4位。ケーキは30位なので、洋菓子の中でもゼリーやチョコに偏っています。

富山市:上位圏に居続けるタイプ

洋生菓子が11位(12,614円)、ゼリーが5位(2,730円)。ケーキは19位で、ほぼ平均です。突き抜けてはいませんが、上位圏に居続けるタイプでした。

宇都宮市:ケーキとプリンの街

ケーキが6位(8,824円)、プリンが3位(2,208円、全国1,859円)。ところが他の洋生菓子は22位。つまり宇都宮は、ケーキとプリンの街です。参考までに、令和2年(2020年)の単年データでは、洋菓子5品目の合計が20,672円で全国平均15,926円を大きく上回り、トップだったという集計があります(二次サイトによる集計)。単年と3年平均を単純には比べられませんが、洋菓子全体で首位に立つ年もあった街です。

「富山と宇都宮が洋菓子の王者」という話は耳にしますが、2023〜2025年の3年平均では、どちらも1位ではありません。ただ、両市とも上位圏に顔を出しているのは確かです。

なぜこの地図になるのか:数字で言えることと、仮説の線引き

統計は「どこで多いか」を教えてくれますが、「なぜか」までは教えてくれません。ここから先は、確認できた事実と、私の仮説を分けて書きます。

事実として重なっているもの

別の統計ですが、パンへの支出(2018〜2020年平均)のトップ5は、神戸、岡山、京都、東京都区部、大阪でした。この5都市は、今回の他の洋生菓子でも、京都2位、神戸3位、大阪4位、岡山8位、東京都区部9位と、すべて上位9位以内に入っています。調査の期間が違うので厳密な比較ではありませんが、小麦とバター、乳製品を使う洋食が日常にある街ほど、洋生菓子にもお金を使う傾向は読み取れます。

仮説として置いておくもの

  • 近畿で他の洋生菓子が強いのは、手土産や贈答で洋菓子を選ぶ習慣と、焼き菓子まで含む枠の広さが効いているのではないか。
  • 首都圏でケーキが強いのは、専門店、百貨店、コンビニと、買える場所が桁違いに多いからではないか。

説明できないもの

高知市や鳥取市が、なぜケーキの上位に入るのか。この統計は何も教えてくれません。世帯人数や共働き率で説明する話も耳にしますが、今回の調査で確かめることはできませんでした。分からないものは、分からないと書いておきます。

売る側の目で見ると、この地図は何に使えるか

店先のメニューを見る女性

この地図は、「洋菓子好きがどこにいるか」の手がかりにはなります。でも「どこでシュークリームが売れるか」の答えではありません。シューだけの数字ではないからです。

通販の現場でこの数字を使うなら、結論ではなく仮説の出発点にします。たとえば、ケーキ支出の高い首都圏と、洋生菓子の支出が高い近畿・金沢で、広告のクリエイティブや商品の見せ方を変えて、地域別に小さく配信してみる。数字の差が出たら、そこで初めて「効く地域」が見えてきます。統計は地図、検証は自分の店でやる。それが私の使い方です。

シューは、売る側にとっても作る側にとっても、地域差が出やすい菓子だと私は見ています。かつて濃厚ミルクシューをOEMで受けていたメーカーに話を聞いたとき、シュークリームはスフレチーズケーキやマカロンと並ぶ「簡単に見えて難しい菓子」の一つだと言っていました。梅雨どきは卵を少なめに、乾燥する時期は卵を多めに。職人が季節で配合を変えるほど、気候に左右される菓子です。乳原料もメーカーによって大きく違い、脂肪分で選ぶのだと聞きました。

同じレシピでも、土地が変われば同じようには焼けない。だからご当地のシューには、その街の個性が出る。これは裏付けのない私の見立てですが、旅先でシューを食べ比べたくなる理由は、そこにあると思っています。

シュー(白背景)

まとめ:旅先で、地元の洋菓子店に寄ってみる

今回の数字から言えることは、三つです。

  • シュークリーム単独の統計はなく、近い枠は「ケーキ」と「他の洋生菓子」。
  • ケーキは首都圏に加えて高知・福島・宇都宮などが強く、他の洋生菓子は近畿と金沢が強い。
  • 人口の多さと、洋菓子にお金を使う度合いは、一致しない。

同じ洋菓子でも、街によって手が伸びる先が違います。次に出張や旅行で金沢や京都、神戸、宇都宮に行く機会があれば、駅前のチェーン店ではなく、地元の洋菓子店に寄ってみてください。ショーケースにシュークリームがあれば、一つ買って食べ比べる。皮の厚み、カスタードとホイップの割合、クリームの甘さ。それだけで、その街の「おやつ」が見えてきます。

出典

データ取得日:2026年10月31日。順位と金額は、2023〜2025年の3年平均(二人以上の世帯、52都市)です。

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