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フワフワからサクサクへ!「クッキーシュー」ブームが変えた日本のシュークリーム進化史

  • 2026年10月4日
  • 2026年10月5日
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シュークリームの「皮」はどっち派ですか?

シュークリーム好きの皆様が集まると、必ずと言っていいほど白熱する論争があります。 それは、「シュークリームの皮は、しっとりフワフワ派?それともサクサク(ザクザク)派?」という議論です。

今でこそ、ケーキ屋さんやコンビニのスイーツコーナーに行けば、クッキー生地が乗った「サクサクのクッキーシュー」や、パイ生地で包まれた「パイシュー」が当たり前のように並んでいます。 しかし、日本の洋菓子史を振り返ると、この「サクサク食感のシュークリーム」が全国的な市民権を得たのは、実はここ20〜30年ほどの比較的最近の出来事なのです。

それ以前の日本において、シュークリームの皮といえば「しっとり、フワフワ、クシュッとした柔らかいもの」というのが絶対的な常識でした。 一体なぜ、日本のシュークリームはフワフワからサクサクへと劇的な進化を遂げたのでしょうか?

本記事では、Choulife編集部が、日本のシュークリームの「食感の歴史」と、サクサクの皮を生み出す製菓理論の秘密、そして一大ブームを巻き起こした専門店の革命について徹底解説します。

かつての常識:昭和のシュークリームは「しっとり柔らか」だった

日本のシュークリームの歴史は明治時代に遡りますが、全国の一般家庭に「庶民のおやつ」として爆発的に普及したのは昭和の時代です。

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「ヒロタ」や「不二家」が定着させたフワフワ食感

「ヒロタ」や「不二家」が定着させたフワフワ食感

昭和の時代、お父さんが仕事帰りに買ってくる手土産の定番といえば、洋菓子の「洋菓子のヒロタ(HIROTA)」や「不二家」などに代表される、箱に詰められたシュークリームでした。 これらのシュークリームの特徴は、薄くて香ばしい皮の中に、隙間なくカスタードクリームがパンパンに詰まっていること。そして何より、皮が「しっとり・フワフワ(少しクシュッとした食感)」であることでした。

なぜ「しっとり」していたのか?(物理的な事実)

当時のシュークリームがしっとりしていたのには、明確な物理的理由があります。 工場で大量生産され、スーパーや駅の売店に運ばれるシュークリームは、乾燥を防ぐために透明なフィルムや袋で完全に密閉包装されます。 シュー生地の中にたっぷりと水分を含んだカスタードクリームを注入し、さらに袋で密閉するとどうなるか。クリームの水分が時間をかけてシュー生地(皮)に移行し、皮が水分を吸って柔らかくなるのです。

この「クリームの水分を吸ってしっとりした皮」と「濃厚なカスタード」が口の中で一体となってとろける食感こそが、昭和の日本人が愛してやまない「シュークリームの黄金比」であり、絶対的な常識でした。

革命の幕開け:「サクサク食感」とクッキーシューの誕生

そんな「しっとりフワフワ」が常識だった日本のシュークリーム界に、1990年代後半から2000年代にかけて、とんでもない黒船(革命)が襲来します。それが「サクサク食感」のシュークリーム専門店ブームです。

「ビアードパパ」が変えたシュークリームの常識

「ビアードパパ」が変えたシュークリームの常識

その筆頭であり、日本のシュークリーム史を語る上で絶対に外せないのが、1999年に1号店をオープンした「ビアードパパの作りたて工房」です。

ビアードパパが画期的だったのは、単に皮をサクサクの「パイシュー」や「クッキーシュー」にしたことだけではありません。サクサク食感を客の口に入る瞬間まで維持するために、「お店のオーブンで皮を焼き、注文が入ってから、お客さんの目の前でクリームを詰める」という実演販売システム(ファストフード的アプローチ)を全国チェーンで確立したことです。

水分移行との戦いを「後入れ」で制す

先述の通り、皮がしっとりしてしまう原因は「クリームの水分が皮に移るから」です。 サクサクの皮を味わってもらうためには、「クリームを入れたら、皮が水分を吸う前に一刻も早く食べてもらう」しかありません。注文を受けてからクリームを入れる「後入れ製法」は、製菓理論の事実に基づいた、サクサク食感を守るための究極の解決策だったのです。 この実演販売の香ばしい匂いと、これまでにない「サクッ!トロッ!」というコントラスト(対比)に日本中が熱狂し、クッキーシュー・パイシューの大ブームが巻き起こりました。

製菓理論で解剖!クッキーシューはどのように作られるのか

クッキーシューはどのように作られるのか

ここで、お菓子作りの科学(製菓理論)の視点から「クッキーシューの皮」の秘密に迫ってみましょう。あのサクサクで甘いクッキー生地は、どのようにしてシュー生地と一体化しているのでしょうか。

フランスの伝統技法「クラクラン」の応用

クッキーシューの製法は、フランス菓子の伝統技法である「シュー・クラックラン(Chou au craquelin)」がベースになっています。

作り方の工程は非常にユニークです。

  1. まず、バター・砂糖・薄力粉を混ぜ合わせて、薄い「クッキー生地(サブレ生地)」を作り、丸く型抜きして冷凍庫でカチカチに冷やし固めておきます。

  2. 鉄板の上に、通常の柔らかい「シュー生地」を丸く絞り出します。

  3. その絞り出したシュー生地の「頭の上(てっぺん)」に、カチカチに凍らせたクッキー生地を帽子のようにペタッと乗せます。

  4. そのまま高温のオーブンに入れて焼成します。

オーブンの中で起こる魔法の現象

これをオーブンに入れると、科学的な魔法のような現象が起こります。

オーブンの熱で、下のシュー生地は水蒸気の力で風船のようにモコモコと上に膨らもうとします。 同時に、上に乗せられたクッキー生地のバターが熱で溶け出し、膨らんでいくシュー生地の表面をタラ〜ッと覆い尽くすようにコーティングしていきます。 そのまま焼き上がることで、シュー生地の膨らむ力と、クッキー生地のサクサクに焼き上がる(メイラード反応による香ばしさ)力が完全に一体化し、あの見事な「クッキーシュー」が誕生するのです。

上に乗せるクッキー生地の砂糖を「ザラメ」にしてザクザク感を出したり、抹茶やココアを混ぜて風味を変えたりと、現在も様々なアレンジが生まれ続けています。

コンビニスイーツへの波及と「食感の多様化」

コンビニスイーツへの波及と「食感の多様化」

専門店が火をつけた「サクサク食感」のブームは、やがてコンビニエンスストアのスイーツ開発にも多大な影響を与えました。

包装技術と配合の進化によるコンビニの逆襲

「クリームを入れると皮が柔らかくなる」という物理法則に対し、コンビニ各社は最新の食品科学で挑みました。 数日陳列してもサクサク感を維持できるように、皮にアーモンドやザラメをまぶして物理的な硬さを出したり、生地に使う油分(バターやマーガリン)の融点を調整して水分を弾くようにしたりと、凄まじい企業努力が行われました。

現在コンビニで見かける「ザクザク食感のシュークリーム」や「クッキー&クリームシュー」などは、この「時間が経ってもサクサクを維持する」という至難の業を、独自の配合技術でクリアした傑作たちなのです。

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よくある質問(Q&A)〜シュークリーム食感編〜

Q. 買って帰ったクッキーシューが翌日しんなりしてしまいました。復活させる方法はありますか?

A. 劇的に復活させるプロの裏技があります。「トースターで軽く焼く」という方法です。 シュークリームをアルミホイルでふんわりと包み(焦げ防止のため)、オーブントースターで1〜2分加熱します。その後、すぐに食べず、冷蔵庫に入れて5分ほど急冷してください。 トースターの熱で皮の水分が飛び、冷蔵庫で冷やすことで溶けたクッキー生地のバターが再び固まり、焼きたてのような「サクサク感」と、中身のクリームの「冷たさ」が同時に復活します。(※加熱しすぎると中のクリームがドロドロになるので注意してください)

Q. 「クッキーシュー」と「パイシュー」の違いは何ですか?

A. 覆っている生地の「製法」が異なります。

  • クッキーシュー: バター・砂糖・小麦粉を練り合わせた「クッキー生地(サブレ生地)」を乗せて焼いたもの。甘みがあり、ホロホロ・サクサクとした食感です。

  • パイシュー: バターと小麦粉の層を何層にも折り重ねた「パイ生地」でシュー生地を包んで(または乗せて)焼いたもの。甘みは少なく、ハラハラと崩れるような軽い食感とバターの強い香りが特徴です。

Q. 昔ながらの「フワフワのシュークリーム」はもう人気がないのですか?

A. 全くそんなことはありません!サクサク食感が定着した今でも、「やっぱりシュークリームは、皮とクリームが一体になって口の中でスッと消えるフワフワ派が良い!」という根強いファンは非常に多く存在します。コンビニの定番シュークリーム(100円〜150円前後のもの)が常にフワフワの薄皮で作られているのは、それが日本人のDNAに刻まれた「安心する味」だからです。

まとめ:食感の多様化がもたらしたシュークリームの黄金時代

食感の多様化がもたらしたシュークリームの黄金時代

「フワフワ」一択だった昭和の時代から、専門店による「サクサク」革命を経て、現在の日本のシュークリームはかつてないほどの多様性と黄金時代を迎えています。

  • しっとりフワフワの皮は、クリームの水分が移行することで生まれる一体感の極致。

  • サクサクのクッキーシューは、フランスの「クラクラン」技法を応用し、クッキー生地を乗せて焼いたもの。

  • 「後入れ製法」や「トースターでの復活技」など、サクサクを保つための科学的な工夫がある。

今日は疲れているから、口溶けの良いフワフワのシュークリームで癒やされたい。 今日は少し刺激が欲しいから、ザクザクと音を立ててクッキーシューを頬張りたい。

その日の気分に合わせて「皮の食感」を選べるようになったのは、日本の洋菓子職人たちとメーカーの熱い探求心の賜物です。次にシュークリームを食べる時は、ぜひその「皮」に隠された歴史と製菓技術の進化に思いを馳せながら味わってみてくださいね。

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