みんな大好き「ダブルシュー」の衝撃の事実
突然ですが、皆様はどんなシュークリームが一番好きですか? 「昔ながらの卵たっぷりの黄色いカスタード派!」という方もいれば、「真っ白でミルキーな生クリーム(ホイップ)派!」という方もいるでしょう。 しかし、日本のスーパーやコンビニのスイーツコーナーを見渡すと、最も人気を集め、必ずと言っていいほど定番商品として陳列されているのが「カスタードと生クリームが両方入った、ダブルシュー(Wシュー)」です。
一口かじると、濃厚なカスタードと、軽やかな生クリームが口の中で混ざり合い、なんとも言えない至福のハーモニーを奏でるダブルシュー。実はこの「2つのクリームを別々に、層にして入れる」という発想、本場フランスの伝統的なシュークリームには存在しない、日本独自の進化を遂げた奇跡のスイーツなのです。
本記事では、シュークリーム専門サイトであるChoulife編集部が、本場フランスのクリームの常識から、なぜ日本で「ダブルシュー」が誕生し、爆発的に普及したのか、そして2層のクリームが混ざらない製菓・製造の秘密までを徹底解説します。 この記事を読めば、いつものコンビニのダブルシューが、さらに何倍も美味しく感じられるはずです!
本場フランスのシュークリームの「中身」とは?
「えっ、フランスのシュークリームには生クリームとカスタードが両方入っていないの?」と驚かれるかもしれません。 事実として、フランスの伝統的な洋菓子店(パティスリー)において、一つのシュー生地の中に2種類のクリームを別々に絞り入れるという製法は、基本的には行われません。
フランス菓子におけるシュークリームの中身は、大きく分けて以下の3つのパターン(クリーム)に分類されます。
1. クレーム・パティシエール(カスタードクリーム)

フランス語で「お菓子屋さんのクリーム」という意味を持つ、最も基本となるクリームです。卵黄、砂糖、牛乳、小麦粉(またはコーンスターチ)を鍋で加熱しながら炊き上げて作ります。 卵のコクとバニラの香りが強く、日本の昔ながらの「カスタードシュークリーム」の中身そのものです。
2. クレーム・シャンティイ(生クリーム)

いわゆる、私たちが「生クリーム」と呼んでいるものです。動物性の生クリームに砂糖(とバニラエッセンス等)を加え、泡立て器で空気を抱き込ませてフワフワに泡立てたクリームです。とても軽やかでミルキーな味わいが特徴です。
3. クレーム・ディプロマット(2つを混ぜ合わせたクリーム)

「それなら、カスタードと生クリームの両方を味わいたい時はどうするの?」というフランス人の答えが、この「クレーム・ディプロマット」です。 これは、炊き上げたカスタードクリームと、泡立てた生クリームを「ボウルの中で完全に混ぜ合わせてから」シュー生地に詰めるという製法です。 カスタードの濃厚なコクと、生クリームの軽やかさが一体化した、非常に滑らかでリッチなクリームになります。日本のケーキ屋さんで「特製カスタード」として売られているシュークリームの多くは、実はこのクレーム・ディプロマットを使用しています。
つまり、フランスの洋菓子理論では「2つの味を楽しみたいなら、究極の配合で混ぜ合わせてから入れる(ディプロマットにする)」のが常識であり、日本のように「別々に絞り入れて2層にする」という発想自体がなかったのです。
なぜ日本で「ダブルシュー」が誕生したのか?
では、なぜ日本ではクリームを混ぜ合わせず、あえて「カスタード」と「生クリーム」を独立させたまま一つの生地に詰め込む「ダブルシュー」が誕生し、ここまで国民的な人気を得たのでしょうか。
そこには、日本人の味覚の特徴と、食品メーカーの並々ならぬ探究心(企業努力)という歴史的事実が隠されています。
「両方味わいたい、でも混ざり合う瞬間も楽しみたい」という欲求

日本人は、食において「口中調味(口の中で別々のおかずとご飯を混ぜ合わせて味わう文化)」を持つ民族です。 スイーツにおいても、「濃厚な卵の味(カスタード)」と「ミルキーな乳脂肪分(生クリーム)」を、まずはそれぞれ独立した味として舌で感じ取った後、口の温度でゆっくりと溶け合い、混ざり合っていくグラデーションを楽しみたいという、非常に繊細で欲張りな味覚を持っています。
最初から混ざっているディプロマットクリームでは出せない、「味のコントラスト(対比)」と「食感の変化」こそが、日本人がダブルシューに惹かれる最大の理由です。
チルドデザート市場と「モンテール」などの企業努力
この「2つのクリームを別々に入れたい」という願いを、全国のスーパーやコンビニで買える「大量生産のチルドデザート(冷蔵スイーツ)」として定着させた立役者の一つが、日本の洋菓子メーカーです。 特に、チルドデザートのパイオニアとして知られる「モンテール」などが、1990年代後半から2000年代にかけて、高品質なダブルシュー(生クリーム仕立てのプチシューやツインシューなど)をスーパー向けに本格展開したことで、一気に一般家庭に普及しました。
当時の日本の食品製造技術の発展により、工場で「カスタードを絞るノズル」と「生クリームを絞るノズル」を連動させ、シュー生地を壊さずに高速で2種類のクリームを注入する専用の機械(充填機)が開発・導入されたことが、今日のダブルシュー大国の礎となっています。
科学で紐解く!2層のクリームが「混ざらない」秘密
ここで一つの疑問が浮かびます。 「工場で機械を使ってシュー生地の中に2種類のクリームをギュッと絞り込んでいるのに、なぜ中でクリーム同士がぐちゃぐちゃに混ざらず、綺麗な上下の層(2層構造)になっているのか?」
実はこれ、偶然ではなく「比重(ひじゅう)」という食品学的な物理法則を利用した、非常に計算し尽くされた構造なのです。
「重いカスタード」と「軽い生クリーム」

物質には、体積あたりの重さを示す「比重」というものがあります。
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カスタードクリーム: 牛乳、卵黄、砂糖、でんぷん(小麦粉)を加熱して作られているため、水分量が多く、組織がみっちりと詰まっており「重い(比重が大きい)」です。
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生クリーム(ホイップ): 液体の生クリームに大量の「空気」を抱き込ませて泡立てているため、体積の多くが空気であり「軽い(比重が小さい)」です。
下にカスタード、上に生クリームが絶対の法則

工場でダブルシューを製造する際、基本的にはまず空洞のシュー生地の「底」に向けて、重くて安定感のあるカスタードクリームを絞り入れます。 その後、同じ穴(または別の穴)から、空気をたっぷり含んだ軽い生クリームを注入します。
すると、水と油が分かれるように、重いカスタードクリームが下(土台)に広がり、その上に軽い生クリームが乗っかる形で、自然と綺麗な上下の層(地層のような状態)が形成されるのです。 もしこれが逆(下に生クリーム、上にカスタード)だと、重いカスタードが沈み込んで生クリームの泡(気泡)を潰してしまい、綺麗な層になりません。
コンビニやスーパーでダブルシューを半分に割ってみてください。ほぼ100%、例外なく「下が黄色いカスタード、上が白い生クリーム」になっているはずです。これは見栄えのためだけでなく、クリームの物理的な重さ(比重)に基づいた、理にかなった構造なのです。
進化し続ける日本の「ダブルシュー」

ダブルシューというフォーマット(型)が完成したことで、日本のシュークリームはさらなる多様な進化を遂げることになります。
フレーバーカスタード×生クリームの無限の組み合わせ
下層の「重いクリーム」をカスタードから別の味に変えることで、バリエーションは無限に広がりました。
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抹茶ダブルシュー: ほろ苦い濃厚な抹茶クリーム(下)× 甘さ控えめの純生クリーム(上)
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チョコダブルシュー: カカオ香るずっしりとしたチョコカスタード(下)× 軽やかなチョコホイップ(上)
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季節のフルーツシュー: 苺やマロンなどの濃厚なフルーツペースト(下)× ミルク感の強いホイップ(上)
このように、「濃厚なベース」と「軽やかなホイップ」を組み合わせるというダブルシューの理論は、日本のコンビニスイーツや専門店において、新作を生み出すための最も強力な方程式として現在も使われ続けています。
よくある質問(Q&A)
Q. 「ダブルシュー」と「ツインシュー」に違いはありますか?
A. 基本的には同じものです。「2つの(Double)」クリームが入っているか、「対になる・双子の(Twin)」クリームが入っているかの言葉の違いであり、どちらも「カスタードと生クリームの2層仕立て」を指します。メーカーやコンビニのブランドによって、商標やネーミングの好みの違いで呼び分けているのが実情です。
Q. フランス人が日本のダブルシューを食べたらどう反応しますか?
A. 多くの場合、「こんなシュークリームはフランスにはない!」と驚かれます。最初は「クリームを混ぜないなんて邪道だ」と思うフランス人パティシエもいるようですが、実際に食べてみると、口の中で2つのクリームの食感と温度差が溶け合う繊細な味わいに感動し、日本のダブルシューを高く評価する外国の方も少なくありません。
Q. ダブルシューを食べる時、上手に食べるコツはありますか?
A. ダブルシューは中に隙間なく2種類のクリームがパンパンに詰まっているため、一口かじると逆側からクリームがはみ出しやすいという弱点があります。 裏技として、「食べる前に、シュークリームを逆さま(上下逆)にする」という方法があります。シュー生地は底の部分の方が厚くて硬いため、逆さまにして食べることで、硬い底面が上顎の圧力を受け止め、クリームが横からブチャッとこぼれにくくなるという物理的なメリットがあります。
まとめ:日本人の探求心が生んだ、誇るべきスイーツ

当たり前のように私たちが楽しんでいる「ダブルシュー(Wシュー)」。 その誕生と普及の裏側には、本場フランスの製法には縛られない自由な発想と、「2つの味を口の中で溶け合わせたい」という日本人の繊細な味覚、そしてそれを実現した食品メーカーの製菓技術のドラマがありました。
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フランスでは「混ぜ合わせる(ディプロマット)」のが主流。
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別々に注入するのは、日本独自の進化系(ガラパゴス進化)スイーツ。
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綺麗な上下の層になるのは、クリームの「重さ(比重)の違い」を利用しているから。
次にスーパーやコンビニでダブルシューを手に取った時は、ぜひ「重いカスタードと軽い生クリームの美しい2層構造」を断面から眺めてみてください。 そして一口かじり、口の中で2つのクリームが混ざり合う瞬間を、日本の製菓技術の歴史に思いを馳せながらじっくりと味わってみてくださいね。
choulifeでは、こうした知的好奇心を満たすお菓子の裏話も定期的にお届けしていきます。次回のスイーツエピソードも、どうぞお楽しみに!