シュークリームの作り方を検索すると、必ず出てくる「膨らまない」というキーワード。これを見て、なんとなく「シュークリーム作り=難しい」といった印象がついてしまっているのではないかと思います。
先に結論から申し上げますと、決してそんなことはありません。しかし、膨らまないことが多いことも事実です。仕上がりを左右するのは本当に微々たる違いなのですが、このちょっとした一工夫に美味しさがかかっています。
シュー生地が膨らまないのはなぜか?
ここでシュー生地のポイントをしっかり押さえて、シュークリーム膨らまない症候群から卒業しましょう!
〈失敗例〉
〈成功例〉
失敗例をお伝えする前に、まずはシュークリームが膨らむ仕組みをみていきましょう。シュー生地をオーブンで加熱すると、シュー生地の中に含まれている水分が水蒸気に変わります。水蒸気は外に出ていこうとしますが、シュー生地に含まれるグルテンがその力を妨げます。これによって閉じ込められた水蒸気がシュー生地を押し上げていきます。これがシュー生地の膨らむ原理です。そして卵が焼けると、中に空洞が出来たまま固まっていきます。
それではいよいよ本題のシュークリームの主な失敗要因と解決策をお伝えしていきます。
バターが冷たい
バターが冷たいまま鍋に入れると、溶けるまでに時間がかるため、水分がけが沸騰して蒸発してしまいます。生地の水分が少ないと、膨らみにくく、かたい焼き上がりになります。バターの加熱時間が最低限で済むように、バターは室温に戻しておきましょう。また、バターが大きな塊のままであると溶けにくいので、小さく切っておくようにしましょう。
加熱の過不足
デンプンを水分と加熱して糊状にすることを糊化といいます。聞きなれない言葉かもしれませんが、お米に水を加えて加熱するとご飯になることも糊化の現象だというとイメージしやすいのではないかと思います。水、牛乳、バターを溶かした鍋に、小麦粉を加えて練りながら加熱をすることで、小麦粉のグルテンが発生し、デンプンを糊化させます。グルテンと糊化したデンプンにはシュー生地を膨らませる働きがあります。糊化が不十分だと生地が十分に膨らみません。また、加熱のし過ぎは余分な水分が蒸発し、バターの油分が分離してしまうので膨らみにくい原因になります。デンプンの糊化の最適な温度である80℃前後で1分半程度の加熱するように心がけましょう。目安は鍋底に薄い膜が張る程度までです。テフロン加工の鍋だと、膜が張らないので、初心者の方はテフロン加工が施されていない鍋の使用をおすすめします。
卵の過不足
卵には水分とタンパク質でシュー生地を膨らませる働きがあります。卵の量が足りないと加熱中に生地が伸びず、膨らみが小さくゴツゴツとした厚い皮になります。逆に、卵の量が多いと、生地がゆるくなってしまいます。緩くなりすぎた生地は上に膨らむ力が弱くなるので、横に広がってしまい、マカロンのような形の焼き上がりになってしまいます。生地の固さの目安はゴムベラですくって生地を落とすとき、生地に透明感があり、途切れずにゆっくりと落ち、残りの生地がゴムベラに逆三角形のような形でついている状態です。
温度の低下
糊化させたデンプンは固くなってしまうと膨らみにくくなってしまいます。その為には加熱してからの作業を生地が冷めないうちに行うことが大切です。特に卵を混ぜる作業は時間がかかってしまいがちなところなので、手早く混ぜるようにしましょう。また、卵が冷たいと生地の温度が下がる原因になってしますので室温に戻しておくことも大事です。生地を絞ってからは、すぐにオーブンに入れて焼けるよう、予熱を入れておくことも忘れないように気を付けて下さい。
乾燥
オーブンに入れるまでに生地の表面が乾燥してしまうと、膜が張ってしまい、膨らみにくくなります。これはパンを焼く時にもよく使う方法ですが、焼く直前に全体に霧吹きで水を吹きかけることで防止することが出来ます。霧吹きがない場合は、手を軽く濡らし、優しく生地の表面を抑えてみてください。著者は過去に全てのポイントをおさえて作っても、小さな帽子のようなシュー生地しか焼けず、投げ出しそうになったことがありました。その時の原因を追究した結果が、この工程でした。最後の最後のひと手間で膨らみ方が随分と変わることは実証済みです。
終わりに
今回ご紹介したポイントを守っていただければ、きっと丸くふんわりと膨らんだシュー生地が焼き上がるはず。一度覚えてしまえば簡単なので是非挑戦してみて下さい。美味しいシュークリームが食卓に並べられるよう応援しています!